いまだにどしゃ降りみたいな夜/ホロウ・シカエルボク
 
はあっという間になくなってしまう
一晩のおやつにするにはちょっと
もったいないくらいの値段だったのに
首のない虫の死骸だけが転がっていて
そいつは死骸のくせに血のひとつも流しはしないのだ
降ってもいない雨が肉体を透過してゆく気がする
降ってもいない雨に晒される幽霊になる
バームクーヘンもまだ消化されてはいないのに
インスタントのコーヒーの苦味は
真夜中にだけ聞こえる冷蔵庫のノイズみたいだ
仮に郵便配達人と名付けられた男は長いことノックし続けていたが
やがて諦めたみたいで足跡が遠ざかっていった
もしかしたらバームクーヘンをひと切れ分けてもらいたかっただけなのかもしれない

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