いまだにどしゃ降りみたいな夜/ホロウ・シカエルボク
 
なんてただの
モノラルの小さなボックスに過ぎない
器用な子供にだって作れるようなものじゃないか
厚切りのバームクーヘンの模様をたっぷり一時間は眺めたあとで
包装をといて口に含んだら
いつの間にか裏側に隠れていた
小さな虫の頭を一緒に齧ってしまった
味も感じないほど小さな虫だったので
そのまま咀嚼して飲み込んでしまった
この世に生まれ無駄に死んでゆく小さな虫など数あれど
バームクーヘンと一緒に齧られた虫なんてきっとこいつぐらいだ
おまけに味なんかまるでしないときてる
仮に郵便配達人と名付けられたドアの外の男は
まだそれを開けてもらうことを諦めてはいない
バームクーヘンはあ
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