無題/葉leaf
少しずつ幹が肥大していくのに優越を感じていた。
小説家はこの夏に帰郷して、一通り墓参を済ませて、夏が弦のように鳴り響きそのまま消えていこうとする、夏の傾いた谷間に身を委ねていた。/近くに住む幼馴染が小説家を訪ねてくる、出来事を形成しようとする明澄さもなく、行為に溺れるだけの底在する痛みもなく。/畑の草を刈ってくれないか…伸びてきた木の枝を切ってくれないか…アジサイを少し分けてもらったよ…お前の本この間読んだよ…/小説家は幼馴染と融合していた子供時代を、現在の幅の外側に向かって、現在の裂け目の内側に溶かし込むように、怠惰に掲げてみることで、幼馴染の上にうずたかく積もっている小説家の「他であるこ
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