無題/葉leaf
 
ること」に巻き込まれていった。/それよりさ、お前も俺も、ずいぶん歳をとったよな。何をいまさら。それよりちょっと沼に行ってみないか? 子供の頃よく釣りしたじゃん。ああ? 別にいいけど。/小説家と幼馴染は沼の外枠に設けられた手すりに身を持たせながら、水と空気が接する時点へ、風と光が切り合う場所へ、少しずつ迫っていった。/俺とお前はさ、昔一人の人間だったと思うんだよ。今じゃ二人だけどな。でも、もっと増えていってもいいと思うんだ。俺とお前は三人でも四人でもいい。つまりさ、俺が小説を書くごとに人の数は増えてって、俺とお前の関係ももう二人の関係以上なんだよね。少なくとも十六人の関係はあると思う。/俺はね、この沼に身を投げた女の子のことをよく思うんだ。自殺も事故も自然死も、まったく同じ。全部虚構だよ。小説の中で起こってるのと全く変わらない。/お前何言ってんのかさっぱりわかんねえ(笑)

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