無題/葉leaf
 
見放していいのだろうか。作中人物を支配することで彼・彼女を蹂躙してきた。私の放った言葉は翻って矢となって私に降り注ぎ、満身創痍の私はそれでも何を確かめたくて傷を癒しているのだろうか。/小説家の両親は彼が三十のときにともに交通事故で死んだ。以来彼の実家は空き家になっていて、小説家は毎年夏と冬にその家に帰り墓参りをしている。/実家の南側の元畑には、土の粒子たちがそれぞれの深さで、植物の根に押されたりミミズや他の虫たちに弾かれたりしながら、金属イオンなどと共に少しずつ焼けていった。/実家の北側に整然と植えられた杉の木立は、太陽光の角度や強さの移ろいを見守りながら、風の攻撃に枝や葉をすばやく感応させ、少し
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