私はヘルメスの鳥。私は自らの羽を喰らい、飼い慣らされる。/木屋 亞万
 
はない身だ

鳥は木の実を食えばよい
私は木の味気なさに耐え切れず肉を喰らう
我が身の何倍も大きな牛を喰らう
忍び足で後ずさりする牛を一頭残らず殺しては
腐ってしまう前に喰ってしまう
肋骨と腸で琴を作ればヘルメスも喜ぶかもしれないし
商品価値のなさに鼻で笑い火の中に放るかもしれない

返り血を浴びる羽根は菌を孕み我が身を滅ぼしかねない
ヘルメスの鳥は羽根を喰らう
返り血を浴びる顔の周りの羽根をむしり取ってはぺろりと食べてしまう
禿げていくのでは遅い
産毛だろうが引き剥がしていくのだ
むき出しの皮膚から血が垂れようと
ぽつりぽつりと血の黒子が膨らもうと
羽根は狩りに
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