【批評祭参加作品】偽善、または『紫苑の園』/佐々宝砂
気分に、私はなかなかなれない。偽善的だと言われると辛いのだ。私だって人間なんだから。偽善的かもなあと思いつつ、私はフォスタープランに送金する。偽善かもなあと悩みつつ、私は教会のバザールを手伝う。これはまさしく偽善だぞと確信しながら、私は地元のボランティア活動に従事する。ええ、偽善かもしれません。きっと偽善でしょう。でも、悪いですかね? 悪くはないはず。偽善は悪よりましであるはず。でも。
香澄のように美しく生きたい。そうつぶやいて私は、宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」に描いたサソリの挿話を思い出す。「ほんたうのしあはせ」と繰り返してやまなかったジョバンニとカンパネルラのことを思い出す。そして私はす
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