【批評祭参加作品】大手拓次のこと/佐々宝砂
ろい花のなかをくぐつてゆく花蜂のやうに、
わたしのあしのうらをそつとかいておくれ。
きんいろのこなをちらし、
ぶんぶんとはねをならす蜂のやうに、
おまへのまつしろいいたづらな手で、
わたしのあしのうらをかいておくれ、
水草のやうにつめたくしなやかなおまへの手で、
思ひでにはにかむわたしのあしのうらを、
しづかにしづかにかいておくれ。
難しい言葉がないのは「青狐」と同じだけれど、どういうつもりで大手拓次がこれを書いたのか、どうして足の裏を掻いてほしいのか、ちょっと普通のひとには理解しがたい。でも、大手拓次の詩は、意味の伝達を第一の目的とはしていないので、私たちは、この
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