【批評祭参加作品】大手拓次のこと/佐々宝砂
 
びにもさだめなくみなぎる
いきもののかなしみ。
あをぎつねはしらじらとうす眼をあけて、あけがたの月をながめた。



 特別に難しい言葉はない。萩原朔太郎や室生犀星の口調よりずうっとわかりやすく、重苦しくもない。小学生にだって読めると思う。「あをぎつね」のかなしみは、誰にでもすうっと理解できるものだし、月のしたで足を「ふうわ」とあげている姿は、誰にでも想像できるもの。でも、そうか、生のかなしみをわかりやすく歌うのが大手拓次のやりかたなのか、などと思われては困るから、もうひとつ詩を引用する。



「 水草の手 」 大手拓次

わたしのあしのうらをかいておくれ、
おしろい
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