【批評祭参加作品】大手拓次のこと/佐々宝砂
 
とだろう。小学生の私は、「みんな死んでしまえ」というたぐいの文章をノートにたくさん書き散らしていたから。

 私は何を考えているかわからないとよく言われる。それがほめ言葉ではないということぐらい、私にもわかる。外で働いてまっとうな生活を送っていればそれでもまだましだが、私のように家にこもって暮らしていて何をしているかわからないような人間は、隣近所から危険人物みたいに扱われている。善人づらしてニコニコしながら、興味もない話を続けるだなんて、私にはとてもイヤなことだ。別に何を考えていてもいいではないか。人に迷惑をかけているわけでも犯罪をおかしているわけでもないんだから。


 私が大手拓
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