【批評祭参加作品】大手拓次のこと/佐々宝砂
私はあまり外で遊ばない子どもだった。リウマチ熱の後遺症で心臓が悪かったせいもあるが、他人とつきあうのが基本的に苦手だったのである。趣味は読書、運動音痴の優等生(得意なのは理科と国語)、性格が暗くて人づきあいが悪く、ときどきいじめられる……自分で書いてて悲しくなるが、私はまさにそのような子どもだった。もっとも、私の子ども時代のいじめはまだ可愛くて、私は恐喝の被害者になったりはしなかった。せいぜい給食のうえで雑巾を絞られる程度のことですんだ。だから運良く犯罪はおかさなかったが、いじめられっ子であった私が何かのきっかけで母親を惨殺したり少女を誘拐したりしたら、それこそマスコミの格好の餌食となったことだ
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