遺書にはならない足跡 2/セグメント
 
うで、母が正しい、母には逆らえないという心情が根底にあったからこその選択だったとも言えるのかもしれない。
 やがて両親は別居し、離婚したのだが、ふと、私は父に会いたくなったのだ。きっかけは分からない。けれど、父の連絡先を知らない私は、「知らない番号からケイタイに電話が掛かって来る、父かもしれなくて気味が悪いから父の番号を教えてほしい、照らし合わせてみる」と母に告げ、父の番号を聞き出したのだ。
 今にして思えば、母は訝しんだかもしれない。私が父と連絡を取ろうとしていると。別に父と連絡を取ってはいけないわけではなかったし、母も、父に会いたいなら会っていいと言っていた。だが、私にとって父に会うことは
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