抒情性の彼方へ/葉leaf
問題は一人称と相いれない独自性を持っているにもかかわらず、それらをすべて一人称の中に回収して語ってしまうこと、それを仮に詩の「抒情性」と名付けてみよう。
抒情性を重視している詩は、詩人の固有性や神秘性、特権性と結びつきやすい。詩は、詩人のかけがえのない声をうたっている。詩は、言語によって世界の神秘へと到達する。詩は人間の最も根源的な叫びを伝える。だが、それは言うまでもなく、詩の独善性と表裏である。詩の少年性といってもいい。一人称を中心に回っている詩にはおのずと限界があり、その限界とは、他者や社会と対等に渡り合う力がないことである。一人の人間の周りには無数の他者がいて社会がある。その他者や社会を
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