【批評祭参加作品】いるかのようにかわいそうなわたし/佐々宝砂
だがあふれていたりする、そんな読者のもとに届きます。そして読者は、「いるかのようにかわいそうなわたし」を思い、なみだしたり感動したりします。つまりこの作品は、読者の自己愛を刺激して、いい気分にさせる、酔わせるのです。作者の意図はどうあれ、そのような効果を持ちます。読者を酔わせるのはむずかしいことです。やさしい言葉をつかって、かつ残酷でありながら読者を酔わせるなんて、ほんとうにむずかしい芸当です。
私は、「いるかのすいとう」が優れた作品であると思います。この詩でとりわけすばらしいと思うのは、あかるい水のイメージにみちた詩文のなか、「焼き付ける」という言葉が強く迫ってくることです。この「焼き付
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