【批評祭参加作品】いるかのようにかわいそうなわたし/佐々宝砂
 
ものがいるかのイメージであるように思います。人魚のイメージも若干かさなります。だいたい、いるかなんて大嫌いだ!という人はあんまりいません。たいていの日本人は、いるかが好きです。だからこそ、いるかについて書くのはたいへんです。ヘタに書くと、環境保護団体のキャッチコピーめいた陳腐なものにもなりかねません。

 この詩がどうにか陳腐さから逃れているのは、詩の人称代名詞が「きみ」だからです。詩の主人公は、いるかであると同時に、読者である「きみ」です。だから、「ねえ、いるか」という一風かわった呼びかけは、そのまままっすぐ読者に届きます。どうしようもない気分だったり、かわいていたり、いたかったり、なみだが
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