【批評祭参加作品】いるかのようにかわいそうなわたし/佐々宝砂
り」があふれています。そして「ひかり」とは「いたさ」です。海のなかに住むいるかが、なぜ陸に住まねばならないのか、説明はありません。この残酷さ不条理さはメルヘン的です。通常よい意味を持つ「ひかり」が、なぜ「いたさ」につながるかの説明もありません。普通の読み方では、なぜかわかりません。しかしメルヘンの文脈でなら多少わかります。「ひかり」を受ける特権的な存在は、同時に「いたさ」を受けなければなりません。メルヘンの世界ではそういうきまりです。
いるかという生き物には、さまざまな既成のイメージがつきまといます。賢くて、かわいくて、透き通った青く美しい海に泳ぎ、ときに残酷に殺される受難者、そうしたもの
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