【批評祭参加作品】いるかのようにかわいそうなわたし/佐々宝砂
世物として売り飛ばしてしまいます。その後、人魚の蝋燭はかえって海の害をひきよせるようになり、海辺の小さな村も「滅くなってしまいました」の一言で片づけられてこのうらさびしいメルヘンはおわります。ランダル・ジャレルの「陸にあがった人魚のはなし」に登場するほのぼのと親しみやすい人魚とくらべて、小川未明の人魚のなんと昏いことでしょうか。
「いるかのすいとう」は「赤い蝋燭と人魚」に較べると明るい印象の作品です。しかし、あかるく口当たりがよいにも関わらず、非常に残酷で不条理な作品です。「この世界に陸はいらない」「ひかりもいらない」と言いながら、いるかの住む場所は「この陸」です。「この陸」には「ひかり」
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