【批評祭参加作品】いるかのようにかわいそうなわたし/佐々宝砂
 
ヘンらしいような気がします。新しい作品の多くは、古いメルヘンに特徴的な残酷さや不条理さを欠いています。メルヘンは子ども向きの砂糖菓子ではありません。苦み辛み渋み、あるいは猛毒さえも持っています。

 「赤い蝋燭と人魚」は有名な作品ですから、あまり説明を必要としないと思いますが、ごく簡単に説明しておきましょう。北の海辺の村で、人魚の赤子を救ったおじいさんとおばあさんは、やがて成長した人魚に蝋燭の絵を描かせます。人魚が絵を描いた蝋燭は不思議な力を持っていて、その蝋燭を灯していると海の害から身を守ることができたので、たくさん売れました。けれども、おじいさんとおばあさんは、金に目がくらんで人魚を見世物
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