淑やかな衝動/笹子ゆら
 

ことばに変えないのが正しいことなのか
わたしには未だに、よくわからないのだけれど
ことばに変える勇気よりはずっと軽いから
そのままであり続けようとしている


気がつかない振りをするのは
認めてしまうよりもずっと苦しいはずなのに
どうしてこんなにも意固地になって
このままでいようとしているのか
自分でもよくわからなくなってしまった


あの柔らかな声が私に向かって放たれることは殆どなくて
それでも少しでも向けてはくれないものかと
見かけるたびに案じたりしながら
その鼻筋だけを目で追ってみたりする


ああ、違っていてほしい、と願う
でもその願いがまったく
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