目覚めゆく街/梅昆布茶
 
新橋とがらんどうの街を駆け抜けると
ここは人々という血流で構成された
シュールリアリズムの巨大なモニュメントにも思えてくる

個々の人生は抽象されて経済学や社会学によって
数値化され概念化され取り扱い容易な
パッケージとして計量される

でも僕達は捨象されたものの温もりの中でしか
生きてはゆけないでくの坊に過ぎなくて
そんな想いを抱きながら街とともに目覚めてゆく

もうはね上がることも無い勝どき橋がやわらかいアーチを
夜の海にむかって講和を求める敗戦国のように伸ばしている
その先にもはみだした下町の生活たちがひしめいているのだけれど
いまはただ暗い海の気配だけが支配し
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