/紅月
影色のつよい風が吹き
王国を覆う黄砂の霧のなかで
蠍のかたちをした遺伝子が蠢いているのがみえる
おぼつかない足元には
名前が奪われたばかりの獣の
黒く濁った骨が転がり
天にはたかく
いくつもの石柱が幽かに聳えている
汚れた布を頭部に巻きつけ
表情を隠した架空の旅人たちが
砂漠のうえ
網のように張りめぐらされた
目に見えることのない巡拝路を進み
やがて地平に消えてゆく数多の背のふるえを
わたしは克明に記憶しつづける
ときに
旅人へ声をかけることがあった
彼らは顔を布に埋めたまま
快活に応じる(影色の風が荒れる)
わたしたちはしばし言葉を交わし
袞々と湧
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