昭和遺文/梅昆布茶
もだちの家で
アトムや鉄人や様々なロボットやサイボーグや
眼を見張る科学兵器たちの洗礼をうけたのだ
ぼくは急速に近代化した
行く手を定めぬものそれが民衆の
意思であると否とにかかわらず日本列島とともに
隆起し海没したのかもしれない
極東の少年はやがて
洋楽や珈琲をおぼえ
酒や女に憧れ星空のしたで
バイクのオイルの焼けるにおいと
首都圏のかわいたハイウエイの神経束のうえを
ざらざらの空気を吸い込みながら
風に飛びそうな自分を確かめながら
壁のないたかみさえ
存在の邪魔だとでも言うように
時に肩をそびやかして
煙草をふかしたりも
してみたのだ
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