虹のプラットフォーム/カワグチタケシ
見上げているたくさんの人を想う
とその人は言う
僕は同じ頃
ひとりの人を想っている
月を見上げながら
たくさんの人を想う人
数人の人を想う人
ひとりの人を想う人
誰のことも想わない人
月を見上げない人
で
世界は構成されている
続いていく未来に光が見えないとき
これが最後の手紙だと思って
何通も手紙を書いた
深夜
土曜日の夜明け前
いまごろきっと恋人は
静かに寝息を立てているだろう
眠っている人に宛てて
手紙を書いている
この手紙を読むとき恋人は起きている
同じ時間に
僕も起きているのだろうか
やがて夜明けとともに
君の罪が僕を照
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