こたえ こたえる/木立 悟
 



月と浪
聴こえない
遠く
月と浪


冬が冬に消える径
水を越える白
越えてくる白


ふたたび光るまで
ひとりは居る
ひとり以外
何もない径


水と青
あかない扉
いずれかの径と やがて交わる


死者が口にくわえる草から
名前だけが消えてゆくとき
足の爪が 
夜を夜に刻むとき


いつ倒れてもおかしくないものがそびえ立ち
いつか誰も見なくなり
今は風さえよけてゆく


明るい夜が岩を昇り
夜ではないものを夜にしながら
飛べない花に手をさしのべる


水に落ちる番号が
落ちるたびに持ち上げる色
もう一度
[次のページ]
戻る   Point(3)