朝を待つ/コーリャ
声がとどかない場所。その夜の音がたえず命令するので。水滴が水面を打って水紋をつくってなにもなくなるようにたよりない彼は従順に生きてきた。なのに砂時計の砂はなぜか湿って。流れることをしない。なのに。また別の朝はやって来る。その朝は彼らの望んだ朝じゃないのに。彼らの大切なことをなにも知らないくせに。彼らをあまねく照らし救う。そんなのもに捧げたくない。その朝も怖い。夜も怖い。だから彼は口当たりのいい言葉で語り続ける。そうすれば。彼の中だけでは。その夜はちがう夜と連結し。満月を背景に弓なりのシルエットを残しながら。長い列車にでもなってしまう。そんなことを独りで考え。彼は笑った。希望が泣いてる。理想が鳴いて
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