ひかり めぐり/木立 悟
 




花は花に
はな はなと告げ
光は水に
背を向けていて

次に言うことを
いつも忘れて
壁をのぼる光の糸
どこからか 聞こえくる砂

景に重なる景や景
歩き進めば降りかかる
ある明るさ ある青空にしか見えない
浮かんでは消える水銀の柱



燃えひろがるもの燃えひろがるもの
何もできずに見つめていた
けだものの口の奥底に
暗いこがねの音は在った

訊いても訊いても
何も応えぬ花ばかり降り
何も削らず何も消さず
あちこちはみ出ながら積もりゆく

毒は毒に去り
色は色に失われ
こぼれ尽きて何もないもの
何もない手によみがえる

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