ろまんちすと/ただのみきや
 
みたり

彼は天性の腹話術師 それとも彼こそ腹話術の人形か

虫の悩みを聞いてみたり 鳥の歌を翻訳したり
花と一緒に涙を流し季節の葬列を見送ったりもする
月と一晩中ポーカーをしては「おまえとは二度とやらない」と言われたり

彼は廃品回収業者 いやいやイカれた乞食野郎さ

誰も目を止めはしないガラクタを拾っては耳を当ててみる
美しく飾られたこの世の対極にある
敗北者の屍を担いで来ては自分の心の庭に埋めている

彼はペンギンのように海を飛ぶが空ではカナヅチだ

現実社会じゃ鉛の足枷があるようだ 雄弁などとは程遠い
それは首飾りの外に転がる鈍色のビーズ
理由あって人の
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