ろまんちすと/ただのみきや
ロマンチストはどの時代にもいる
ここにも一人
彼はインチキ古物商と素人骨董愛好家の一人二役だ
誰もが経験するようなありふれた出来事を
時を超えて微笑みかける
運命という名工の作として心の床の間に飾っている
彼は通り過ぎる女性のほとんどに恋をする
今日も沢山の恋物語に埋め尽くされるけど
きまって一番最初の物語を読み返したくなるものだから
いつも探し物で心の書斎はごったがえしだ
彼はどこに居てもそこには居ない
夜には哲学の森で行倒れ 朝には詩情の光を天まで駆け上る
街を行き交うカラフルなニュースにコードを付けて
雨のように皆の頭上の黒い傘を鳴らしてみた
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