夜を溶かした数だけ抒情は真実味を増す/青土よし
◆ 果たされないまま思い出になろうとしている幾つかの時間を夢に見る。
黒い鳩がこちらを睨みつけており、私はそれから逃れるために海辺の街へ向かうことに決めた。
乗り込んだバスに無かったものは、窓と、コップと、テレビのリモコン。
うしろから二番目の座席に白い猫が座っている。
白い猫は、まるでそこに窓があるかの様に壁の方に顔を傾げて、後方へ流れていく景色を追うかの様に目線を動かしている。
ファ#が鳴れば、海辺の街に着いた合図だ。
私の前には白い麻のシャツを着た青年が立っている。
その青年が先程の白い猫である事くらいは私にでも分かった。
私たちは海のブランコを目指さなければ
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