夜を溶かした数だけ抒情は真実味を増す/青土よし
 
ればならないので、早速、両脇を白い建物が並ぶ石畳の路地(それはありがちな風景だった)を進んだ。
二人分の足音が響き、その隙間には波の音がきこえた。
讃美歌のおわりに白いブランコがあった。
ブランコの周りにはいろんな種類の虫が群がっていた。
白い青年はもう何年もむかしに居なくなっていた。
飛び込んだ海に無かったものは、月と、朝と、あらゆる生命の息吹。
夜が海を溶かそうとしているので、私はそれから逃れるために夕凪の中を走った。
虫けらたちは夜の暗い境界線へ勢いよくはばたきだした。
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