精神病院の一室で/智鶴
 
雪の舞う硝子の中で君は
まるで冷たくないみたいな振りをして
もう死んでいるみたいな振りをして
温かい灯りに横たわっていた
虚ろな瞳を何処ともなく向けて
不思議な味のアイスクリームを齧っていた

とうに消えたはずの幻に温かさを期待して
何かを成し遂げた気になっていた
君ですら手に入れたように
それほど馬鹿だったことにも気付かなかった
まるで気にしていない素振りで君は
僕のビスケットを奪い取った
それは僕の大切にしていた最後の意識
誰も僕が精神病だなんて気付かなかった

君が隠していたのは
傍から見れば何てことはない
屑かごに捨てられるような錠剤と
錆びた剃刀とガ
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