精神病院の一室で/智鶴
とガスの抜けたライター
あいつの甲高い声と
奇妙な指先の動きが君を狂わせたのかも知れなかった
フィルターを噛み潰した煙草を苦々しげに吐き出して
味気ない深呼吸を繰り返した
灰色に似た青色をした空を見上げながら
君が吐き捨てた言葉を思い出した
「嘘じゃないよ、届かなくていい言葉なんて幾らでもあるもの」
そうだ、確かそんなことを言っていた
何処か遠くで喋ってるように聞こえる
「聞こえないでなんて願わないで」
そんな無理な話を君は表情を変えずに言った
騙されたふりをした僕に
君が気付かなかったのかは分からない
君の思考に指を絡ませる余裕なんてないし
それでもいいと思っている
言葉でも何でもない
こんな馬鹿げた話はないよ
夢に似てただけさ
君の姿がさ
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