宛名のない手紙/動坂昇
何がきっかけだったのでしょう。それは私にはわかりませんけれども、それはきっとなにげないことだったのでしょう。あなたはそのときこう思ったのではありませんか。日本人はやっぱりひどい。あいつらは、あんなことをしておいて、いまだにあやまりもしない。許せない。あいつらは人間じゃない。そして、彼も。
あなたは、あなたにつながる人々が大人の社会のなかでこれまでに受けてきたいじめを、彼に、してしまったのではありませんか。
あなたは、日本人の残虐性、と言いましたね。一方、あなたがやってしまったことは、どうでしょうか。いじめをやってしまったあなたは、あれほど憎んでいた、日本人になってしまったのでしょうか。
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