宛名のない手紙/動坂昇
 
らは今でもふたつに引き裂かれたまま。しかたなくそのままこちらに住んでいるけれど、まわりのひとびとは冷たい。そのひとたちと同じように生活したいのに、その権利をもらえない。もともとここには自分からやってきたわけではないのに、お金がなくて帰れないのに、「外国人は国に帰れ!」と言われる。ネットが普及すると、ますますそういう言葉が、匿名掲示板などで飛び交うようになりました。ほんとうにひどいことです。あなたは、大人たちからあの語彙を教えられたあと、この現実を自分でも見て、日本人はほんとうになんて残虐なんだと思ったのでしょう。そしてあなたは、日本人を憎み――そして、彼をも憎んだのではありませんでしたか。
 何
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