宛名のない手紙/動坂昇
 
 言われてみれば、確かに、そういうことを思わせるほっそりしたきれいな顔だちでした。たぶん、お父さんによく似たんだろうなと思いました。幼い私は何も知らなかったので、無邪気にこう言いました。
 「○○ちゃんは、ハーフってことやなー」
 「一応はな。でもな、国籍は、韓国人やねん」
 「へ?」
 「あたしな、日本国籍は、一生とらへんて決めてんねん」
 私はほんとうに無邪気だったので、国籍のことなんて考えてもみませんでした。
 「でも、なんでなん? そのままやと、なんか、不便なことあるんちゃう?」
 「知ってるやろ? 日本人は、むかし、朝鮮のひとらに、むごいこといっぱいしたやろ? 男の人にも、
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