境目も変わり目もなく ただ足音が響くだけ/ただのみきや
そこにいたのかも定かではない
なにかが
ヘリコプターの襲来にヒヨドリたちは増々ヒステリックになり
雨脚が強まるとキリギリスたちは沈黙を決め込んだ
まるで存在すらしなかったかのように
一雨毎に何かが分け隔てられる
無限にも思える一粒一粒が
何かを融解し
何かを目覚めさせ
何かに死をもたらし
近づく足音と遠ざかる足音
戦争と平和 そんな対極の境目すら
人は見出すことが出来ずに右往左往する
まるで平和が戦争の母であり
戦争が平和の父ででもあるかのように
だが どちらも人間の私生児だ
戦争は丈夫な子だったが
平和は虚弱な未熟児だった
人は両方を育てる
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