境目も変わり目もなく ただ足音が響くだけ/ただのみきや
山ぶどうに覆われた丘陵地沿いに車を止め
アキアカネの静止
止みきらない雨
昼から夕へ傾むいてゆく
キリギリスたちの単調なコーラスに
ヒヨドリの絞り出すような歌声が響いていた
この辺りの夏はすでに黄昏を帯び
会話の途切れがちな恋人たちのよう
季節の変わり目は抜け落ちた記憶
別れが近づいていることを感じながら
気がつけば ただ後ろ姿を見送っている
時代の変わり目も また同じよう
「その日を境に」 なんて
後々都合よく立てたフラッグに過ぎない
誰にも知られないところで
たとえば誰かの頭の中で
それが何をもたらすのか知る由もなく
蠢いている
何時からそこ
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