夜と片目/木立 悟
曇の無い空が
何層も重なり
広く平たい建物のように
さまよう色をして建ち並ぶ
夜のはじまり
手がつかむ空
ひらいて ひらいて
上の上の糸
波は常に流れていて
窓の多い夜を畏れ
どこまでも
建物のない道をゆく
稲妻が笑い
鉛筆は折れ
裂けば裂くほど 紙は遠く
言葉は遠く
塩に塩に倒れる樹
岩と氷のはざまの地
誰も居ぬまま
かがやいている
断たれてはつながる
光の矜持
目を傷めては
見えるうたとなる
木の家がまた
ひとつ消えた日
虫も鳥も けだものも火も
ゆうるりと地図を書きかえる
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