さよなら、と黒焦げた蛾は言った/ホロウ・シカエルボク
 
は相変わらず降り続いていて…
どんな運命でもきっと俺は生きることを選ぶだろう
そこに俺が並べるための言葉があるだろう
黒焦げになった蛾は小さな屋根の上にいる
小さな屋根の上から俺のことを見ている
明るい方にいらっしゃいよとそれだけを囁くのだ
なあ蛾、お前、死んだぜ
俺はそいつがきっと気づいていないと思って
窓に近づいてガラス越しにそう言った、やつはたぶん少し笑って
そんなことどうだっていいことだと言った
肉体だけが生でなかったとしたら、あたしは明るい光にたどり着いたって事なのよ
お前、それで何が言いたい
この俺にいったいどんなことを伝えようとしている?
俺は肉体か
俺は
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