しょうけいのひまらや/佐々宝砂
 
憧憬と書いて
どうけいと読むのだと思っていた
でも
しょうけいとも読むらしい
しょうけいのほうがかっこいい

とおもったのは
本多勝一の『憧憬のヒマラヤ』を読んだときで
ええと
わたしは
中学生で
とうさんなんかきらいだった
女子中学生の何割かが常にそうであるように

小径のひまらや
小憩のひまらや
ううん
小さいという字はひまらやに似合わない
象形のひまらや
勝景のひまらや

やっぱり
憧憬のひまらや

とうさんは山男だったから
本棚にはたくさん山の本があった
文字ばっかりのガストン・レビュファより
山の写真集が私は好きだった

寒いのに
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