きんいろ/鯉
に乗り込むと、一気にともだちが喋りだした。それにつられておれもHも会話を始めた。少し難儀して、車が河原を抜け出していった。
会話をしている最中、虫がそこにもいた。蚊だった。町が近付くとよけいに増えてくるようだった。窓は開けていなかった。
ビルだの家だのの明かりが顔を撫でて過ぎていった。夜眠っているときに車の影が光と一緒に部屋の中を通り過ぎるように、車の中にも部屋の光や影は通り過ぎるのだろう。歩いている人間はふしぎと少なかった。
「うっぜえなあくそ」ともだちが言った。煙で紛らわそうとしてたばこをみんなで吸うと、もっと増えてきている気がした。頬や腕や膚が痒い。チカチカした信号の光が、煙を浴び
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