怪談 をんなふくら萩之変/salco
蜘蛛の巣でも絡みついているような
シフォンの小切れが触れて来るような
そんな感じがしてならない
頃は享和元年、水無月晦日
宵の口から手間賃を使い果たして
佳い心もち
ぽつり兆した雨もものかは
右手に潮の香
左手に木箱を担いでふらふらと
やって来たのは大工の助兵衛
折も折
湯屋を出て来た姉さんかむりの柳腰
風呂敷抱えた風情も艶な、絞りの浴衣に
湿りのお腰(腰巻)
里の丸山むっちりと、上へ下への足運び
洗い上げた足首ちらちら、締まりは上々
踵もやわな桃いろに
ぐいと出ちゃった、鎌首ならぬ喉から手
くちびるを舐め舐め二歩三歩詰め
行きがけの駄賃に谷あい分けみれば
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