時代外れなエッセイ 虫/佐々宝砂
思った。火に入りたけりゃ入って焼けてしまえ、焼けて死んでしまえ、その方が本望なんではないか? 私はかまどに残っていたごく小さな熾をウチワであおぎ、薪を継ぎ足した。ぐいっ、となまぬるい焼酎をストレートで飲んだ。さらに熾をウチワであおいだ。炎があがった。また焼酎を飲んだ。それから私は小さな謎アゲハの死体を炎の中に落とした。火は瞬間ちいさくなり、そしてまためらめらと大きくなり、もともと小さなアゲハの身体はあっという間に燃え尽き、紙を焼いたようなぺらぺらした灰になり、風に乗ってどこかに飛んでいった。
虫は単純に虫として生き、単純に虫として死ぬ。そんな単純な事実に無理矢理意味を与えるのは間違いなく私、
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