時代外れなエッセイ 虫/佐々宝砂
 
私、人間である私だと思った。すこし、嫌気がさした。またも焼酎を飲もうとした。だが、しっかり焼酎を飲み込みきるまえに、うっとこみあげてきた。こみあげたのはもちろん、涙ではなくゲロだ。私は虫が一匹死んだくらいで泣きはしない。それがどんなに特殊な虫であったって。

キャンプ地の朝は早い。近隣のテントの人々は、そろそろ目覚め始めていた。






初出 2004.8.
蘭の会コラム
http://www.os.rim.or.jp/〜orchid/column_n/index.html

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