時代外れなエッセイ 虫/佐々宝砂
 
である。汚れた食器も洗ったし、鉄板も洗ったし、やることがない。やることがなくても人間は何かをやりたがるものなので、石でつくったかまどに無闇に木ぎれを放り込んで火を熾した。猛暑の都会と違って、午前3時の川辺は肌寒い。たき火はやわらかな熾き火になってほどほどに温かく、心地よかったが、身体が温まったせいか午後七時ごろからずーっと飲み続けていた日本酒が急にまわってきた。さすがにこりゃ寝なくちゃなあと私らしくもないマトモなことを考え、蛍光灯ランタンを消し、テントに入り、寝袋にもぐり込んだ。

トイレに行きたくなって目を覚ましたのは何時頃だったろう。東の空が明るみヒグラシが鳴いていたから、午前5時頃だった
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