時代外れなエッセイ 虫/佐々宝砂
ようとも考えなかった。携帯電話を持っていたから写真に撮ってもよかったなとあとで思ったけれど、写真すら撮らなかった。キャンプ中の私は本当にぼけぼけしていて、おまけにいつでもアルコールが入っている状態なので、ほとんど何の役にも立たない。
小さな謎のアゲハは、タープ中央に吊り下げた電池式蛍光灯ランタンにとまって動かなかった。私以外のキャンプメンバーは、みなバンガローに寝ると言って引き上げてしまっていた。私は一人でテントに寝るつもりだった。テントで寝なけりゃキャンプな気がしないじゃないか。しかしひとりなのであまりに暇だった。本もなけりゃパソコンもない、携帯電話は電源を切ってバンガローにしまいこんであ
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