岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
ちょうど十八年前のはなし
なさけぶかく用心ぶかく
けものにころされないうちに
人はあわててけものをころす
するとサイレンがウウウウウウ
きらきらひかるヒコーキ一機
あおぞらのふかいところに。
言語というものは反復可能なものです。本来、物事というものは、一回限り、唯一のものであり、例えば昨日の私と今日の私は別物であるはずです。それでも、そのような違ったものさえも同じ「私」という言葉で反復してしまう。これは、それぞれの時点での私の差異を度外視した一種の暴力であります。本来なら、唯一でかけがえがなく、それぞれ異なっているはずのものを、同じ言葉で同一化してしまうのですから。言語は、
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