岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
は、ものごとの唯一性・かけがえのなさを破壊するのです。
ですが、本当にそう言い切れるでしょうか。
辞書によれば、「既視感」とは「実際は一度も経験したことがないのに、ある体験を以前にしたことがあるという感じがするような錯覚」である。(中略)さきに引いた辞書の説明を敷衍すれば、わたしたちのあらゆる体験は厳密にいえば一回きりのものである。にもかかわらず、日常的手順のなかでは体験は何度でも繰り返されるもののように見える。つまり、新しいのに新しくない体験をつねに強いられている状態、それがわたしたちの日常である、とでも言えるだろうか。(中略)既視感の定義を裏返すなら、新しくないと感じられる体験は、
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