岩田宏詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
は、つねに新しいのである。(「誉むべき錯覚」より)
ここで岩田は、経験もまた反復可能であることを述べています。つまり、本来は違っているはずの経験を同じ経験だと認識してしまう、人間にはそのような錯覚があるのだ、と。それが既視感です。ですが、岩田はそこで発想を逆転させます。既視感とは、かけがえのない個別の体験を同一のものとしてしまう暴力なのではなく、むしろ、同じものを新しくとらえなおすことなのだ、と考えるのです。過去の経験と現在の経験が同じように思われるけれども、実際は違う、現在の経験は新しいのだ、そのことに改めて気付かせてくれるのが既視感なわけです。
さて、岩田の詩に戻りましょうか。この
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