続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
 ぼくらの舌を形づくり 太陽と葡萄の結晶物 不定形で流動的な結晶物は やがて咽喉部の暗い通路を まがりくねって降りて行くと

(中略)

 ぼくらの心は インドのワインで燃えていたから創造的な芸術家 つまり批評家も立ち聞きしてくれない泥棒になるよりほかになかった インドの星を瞶めているうちに

 青いサファイアの十字架を狙って 神父に化けた大泥棒 その正体を見破ったカトリックの坊さんが云ったっけ――「あんたは理性を攻撃したではありませんか。それはよこしまな神学でな」

 太陽がのぼり 青い十字架は消滅する 内なる芸術家も批評家も行方不明になって ぼくと青年は 神々と動物と性とがはげ
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